萱島の大クスノキ考察|駅ホームを貫く樹齢700年の御神木

萱島の大クスノキ考察|駅ホームを貫く樹齢700年の御神木

更新日:2025年12月9日

大阪府寝屋川市にある京阪電鉄・萱島駅には、駅のホームと屋根を貫いてそびえ立つ巨大なクスノキがあります。樹齢700年ともいわれるこの御神木は、高架複々線化工事の際に伐採されることなく、駅舎と共存する形で保存されました。全国でも類を見ないこの光景について、現地の案内板をもとに調査・考察してみました。同じように植物や鉄道に関心をお持ちの方の参考になれば幸いです。

1. 萱島の大クスノキの概要

萱島の大クスノキは、京阪電鉄萱島駅のホーム上にそびえ立つ巨木である。その規模は高さ約20メートル、幹回り約7メートルに達し、樹齢は700年ともいわれている。昔から「萱島の大クスノキ」として地元住民に親しまれてきた存在であり、特有の芳香を放ち、豊かな緑を繁らせて人々にやすらぎを与えてきた。

1.1 クスノキの特徴

クスノキ(楠)は常緑広葉樹であり、樟脳の原料として知られる。その芳香には防虫効果があり、古来より神聖な木として神社の境内に植えられることが多い。萱島の大クスノキもその例外ではなく、地元の人々から尊崇の念を集めてきた。

萱島の大クスノキの基本データ
高さ:約20メートル / 幹回り:約7メートル / 推定樹齢:約700年 / 所在地:大阪府寝屋川市萱島本町(京阪萱島駅構内)

2. 保存に至る経緯と歴史

このクスノキが現在の姿で保存されるに至った背景には、昭和47年(1972年)11月に着工した京阪電鉄の高架複々線化工事がある。寝屋川信号所間の輸送力増強を目的としたこの工事において、萱島駅周辺の高架化が計画された。

保存までの経緯
昭和47年(1972年)11月:寝屋川信号所間高架複々線の建設着工。地元住民のクスノキに寄せる尊崇の念に応え、伐採ではなく保存の方針が決定される。

昭和55年(1980年)夏:クスノキの根元に萱島神社が再興される。

2.1 全国に例をみない駅舎との共存

通常、鉄道の高架化工事において、建設予定地に大木が存在する場合は伐採または移植が検討される。しかし萱島駅の場合、京阪電気鉄道株式会社は地元住民の意向を尊重し、クスノキを後世に残すことを決定した。その結果、ホームと屋根を突き抜ける形でクスノキが保存されるという、全国にも例をみない駅舎が誕生した。

項目 内容
工事名称 寝屋川信号所間高架複々線建設工事
着工年月 昭和47年(1972年)11月
工事目的 輸送力増強
保存の理由 地元住民のクスノキに寄せる尊崇の念
事業者 京阪電気鉄道株式会社

3. 萱島神社との関係と現在

萱島駅を出てすぐのクスノキの根元には、萱島神社が鎮座している。この神社は昭和55年(1980年)の夏に再興されたものであり、大クスノキはその御神木として祀られている。

3.1 御神木としての大クスノキ

萱島神社の再興により、大クスノキは単なる保存樹木から御神木へとその位置づけが明確化された。駅利用者や地元住民は、日常的にこの御神木を目にすることで、自然への畏敬の念や地域の歴史への理解を深めることができる。

萱島駅・大クスノキへのアクセス

  • 最寄り駅:京阪本線 萱島駅(大クスノキは駅構内に所在)
  • 萱島神社:萱島駅を出てすぐ、クスノキの根元
  • 見学:駅ホームから間近に観察可能

3.2 地域のシンボルとして

萱島の大クスノキは、鉄道インフラと自然環境の共存を示す象徴的な存在である。高度経済成長期における開発優先の風潮の中で、地元住民の声に応えて保存を決断した京阪電鉄の姿勢は、現代における都市開発と環境保全の両立を考える上で示唆に富む事例といえる。

いつまでも大切に育ててゆくため、クスノキを駅と共にこの地に残すことにしたという京阪電鉄の言葉は、単なる企業姿勢を超え、地域と企業が協働して文化遺産を守る一つのモデルケースを提示している。樹木がホームと屋根を突き抜けるという特異な光景は、訪れる人々に強い印象を与え、萱島駅を全国的にも知られる存在としている。

参考・免責事項
本記事は2025年12月9日時点の情報に基づいて作成されています。記事内容は現地案内板(京阪電気鉄道株式会社設置)の記載をもとにした個人的な考察であり、最新の情報については現地または京阪電鉄公式サイトをご確認ください。