コムラサキ観察記録2025|宝石のような紫の実とムラサキシキブとの見分け方

コムラサキ観察記録2025|宝石のような紫の実とムラサキシキブとの見分け方

更新日:2025年10月18日

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秋の庭を彩る紫色の美しい実、コムラサキをご存知でしょうか。ムラサキシキブと混同されることが多いこの植物は、実は園芸品種として庭木に最適な特徴を持っています。実のなり方や葉の形など、見分けるポイントがいくつもあり、知れば知るほど興味深い植物です。個人的な関心から調査・考察してみました。同じように関心をお持ちの方に参考になれば幸いです。

コムラサキの基本情報

植物としての特徴

コムラサキは、シソ科(旧クマツヅラ科)ムラサキシキブ属に分類される落葉低木です。樹高は1〜2メートル程度で、細い枝が弓状に枝垂れる姿が特徴的です。株立ち状に成長し、自然な趣のある姿が和風の庭によく合います。

学名の意味
学名Callicarpa dichotoma の「Callicarpa」は、ギリシャ語の「callos(美しい)」と「carpos(果実)」を組み合わせたもので、「美しい実」という意味です。その名の通り、観賞価値の高い実が最大の魅力となっています。

花と実の特徴

6月から8月にかけて、淡い紅紫色の小さな花を咲かせます。花は約3ミリ程度と非常に小さく、葉の脇から伸びた花軸に10〜20輪が集まって咲きます。花自体はあまり目立ちませんが、雌しべ1本と雄しべ4本が花先から突き出す様子がユニークです。

秋の9月から11月になると、直径3ミリほどの球状の実が鮮やかな紫色に熟します。最初は緑色だった実が、時間の経過とともに明るい紫色に変化していく様子は、まるで小さな宝石のようです。実は房状にまとまって付き、その密集した姿が観賞価値を高めています。

分布と生育環境

日本では本州(東北南部以南)から沖縄まで分布し、朝鮮半島や中国にも自生しています。明るい山林の湿地や草原、野山に生えますが、現在では庭木として植栽されることが多く、公園や寺院の庭でよく見かけます。

コムラサキは自家受粉で実がなるため、単独で植えても豊富に実をつけます。この特性が園芸品種として人気を集める理由の一つとなっています。

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ムラサキシキブとの見分け方

名前の由来と混同

「ムラサキシキブ」という植物名は、紫色の実が美しいことから源氏物語の作者・紫式部に例えられたという説があります。コムラサキの名前の由来には諸説あり、小さいムラサキシキブという意味のほか、同時代の女流歌人・小式部内侍にあやかったという説もあります。

園芸店では、本来はコムラサキなのに「ムラサキシキブ」という名前で販売されていることも多く、混同されているのが実情です。庭木として植えられているのは、ほとんどがコムラサキの方です。

花言葉
コムラサキの花言葉は「気品」「知性」「聡明」です。紫式部をイメージした格調高い花言葉が付けられています。

見分けるポイント

コムラサキとムラサキシキブは非常によく似ていますが、以下のポイントで見分けることができます。

特徴 コムラサキ ムラサキシキブ
実のなり方 密集してまとまってつく まばらにつく
果柄の位置 葉腋よりやや上から出る 葉腋と同じ場所から出る
葉の鋸歯 葉の上半分〜中央部のみ 葉の基部近くまで全体
葉の大きさ 3〜8cm(小ぶり) 6〜12cm(大きめ)
枝の様子 柔軟で枝垂れやすい 丈夫で真っすぐ伸びる
樹高 1〜2m 2〜3m
生育場所 園芸品種(庭木) 自生種(山野)

変異種

コムラサキには白い実をつける品種があり、「コシロシキブ(小白式部)」や「シロミノコムラサキ(白実の小紫)」と呼ばれます。紫色の実とは異なる清楚で凛とした印象を与えます。

育て方と楽しみ方

栽培のポイント

コムラサキは比較的丈夫で育てやすい植物ですが、美しい実を楽しむためにはいくつかのポイントがあります。

栽培の基本

  • 日当たり:明るめの日陰〜半日陰が最適。日当たりが良いほど実つきが良くなりますが、夏の強い西日は避けます
  • 水やり:やや湿り気のある環境を好みます。地植えは基本的に降雨のみでOKですが、鉢植えは表土が乾いたらたっぷり与えます
  • 肥料:あまり必要ありませんが、実つきが悪い場合は春と秋に緩効性肥料を少量施します
  • 剪定:新しい枝に花がつくため、晩秋から冬に古い枝を根元から切り、長い枝は切り詰めます

繁殖方法

コムラサキは挿し木で簡単に増やすことができます。古枝挿しなら3月頃、新梢挿しなら6〜7月頃が適期です。10〜15cmの枝を切り取り、水揚げした後に挿し木用の土に植えます。株分けも可能ですが、根を傷つけないよう注意が必要です。

実は食べられる?

コムラサキの実には毒性はなく、ほのかに甘みがあると言われています。しかし、1粒が非常に小さく、積極的に食べるほど美味しくないため、食用としては利用されていません。メジロ、ヒヨドリ、キビタキなどの野鳥が好んで食べに来るため、バードウォッチングを楽しむこともできます。

様々な楽しみ方

庭や鉢植えで観賞するだけでなく、生け花やドライフラワー、苔玉にして楽しむこともできます。冬に落葉して枝と実だけになった姿も風情があり、一年を通して観賞期間の長い植物です。

コムラサキの年間サイクル
6〜8月:淡い紅紫色の小花が咲く
9〜11月:紫色の実が熟す(観賞のピーク)
11〜12月:黄金色に黄葉
12〜2月:落葉後も実が残り、枝と実の風情を楽しめる
参考・免責事項
本記事は2025年10月18日時点の情報に基づいて作成されています。植物の生育状況は地域や環境によって異なる場合があります。栽培に関する詳細は、お住まいの地域の気候や条件に合わせて調整してください。園芸店で購入される際は、ムラサキシキブとコムラサキが混同されている場合があるため、実物を確認されることをお勧めします。