ナンキンハゼ観察記録2025|四季を彩る白い実と紅葉の美しさ

ナンキンハゼ観察記録2025|四季を彩る白い実と紅葉の美しさ

更新日:2025年10月18日

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秋の街路樹が鮮やかに紅葉し、冬には白い実だけが枝に残る——そんな風景を演出するのがナンキンハゼです。ハート形の葉と美しい紅葉、ポップコーンのような白い実が印象的な、四季を通じて楽しめる樹木について調査しました。参考になれば幸いです。

ナンキンハゼの基本情報

ナンキンハゼ(南京櫨)は、中国原産のトウダイグサ科ナンキンハゼ属の落葉高木です。新緑、花、紅葉、白い実と、四季折々の美しい姿を見せることから、街路樹や公園樹として広く植栽されています。

分類と基本データ

基本情報
科名:トウダイグサ科ナンキンハゼ属
学名:Triadica sebifera
原産地:中国
樹高:10~15m
花期:5~7月
果期:10~11月
紅葉時期:10~12月
生育環境:公園、街路樹、庭園

名前の由来

「ナンキンハゼ」という名前には、以下の由来があります。

  • 南京(ナンキン):中国から渡ってきた植物を指す言葉
  • ハゼ:ハゼノキのように紅葉が美しいことから。ただし、ハゼノキ(ウルシ科)とは別の科で、樹液に触れてもかぶれることはありません

学名の「sebifera」は「脂肪のある」という意味で、種子から採れるロウ質に由来します。

中国では古くから種子からロウを採取し、ろうそくや髪油の原料として利用されてきました。現在でもクリスマスリースやお正月飾りの材料として、白い実が人気です。

暖地でも美しく紅葉

通常、紅葉は寒暖差が大きくないと美しく色づきませんが、ナンキンハゼは暖地でも鮮やかに紅葉します。そのため、特に関東以西の温暖な地域で多く植栽されています。

特徴と見分け方

葉の特徴

ナンキンハゼの最も印象的な特徴は、ハート形に近い菱形の葉です。葉は互生し、ポプラに似た形状をしています。

葉の特徴
形状:菱形に近い卵形、ハート型
配置:互生
葉柄:長い葉柄を持つ
特徴:葉柄と葉身のつなぎ目に1対のいぼ状の突起
新芽:赤みを帯びたクリーム色

花の特徴

ナンキンハゼは5~7月に開花します。枝先に黄緑色の小花が、長さ5~15cmの穂状に連なって咲きます。雌雄同株で、花穂の上部に雄花が多数、基部に雌花が少量つきます。

花木として注目されることは少ないですが、花には微香があり、ハチ、チョウ、ハエなど多くの昆虫が集まります。蜂蜜を作る蜜源としても重要です。

最大の特徴:白い実

ナンキンハゼの最大の見どころは、秋から冬にかけて見られる白い実です。

時期 実の状態
夏(7~9月) 緑色の実がつく
秋(10~11月) 黒い殻に覆われた実が成熟
晩秋~冬 黒い殻がはじけて白い種子が現れる(きっちり3個)
冬(12月~) 葉が落ちても白い実は枝に残る
白い実の正体
白く見える部分は、種子を覆う白いロウ質の皮です。ポップコーンのような可愛らしい見た目から、ドライフラワーの花材として人気があり、クリスマスリースやお正月飾りによく使われています。

美しい紅葉

ナンキンハゼの紅葉は非常に美しく、見る人を魅了します。緑から黄色、そして赤へとグラデーションを描きながら色づいていく様子は圧巻です。

紅葉の特徴

  • 色の変化:緑 → 黄色 → オレンジ → 赤と段階的に色づく
  • 暖地でも美しい:寒暖差が小さくても鮮やかに紅葉
  • 白い実とのコントラスト:紅葉と白い実の組み合わせが絶景
  • 落ち葉も美しい:色とりどりに色づいた落ち葉が地面を彩る

花言葉

ナンキンハゼの花言葉は「真心」「心が通じる」です。これは、葉の形がハート型をしていることに由来しています。

観察できる季節と四季の変化

四季折々の姿

ナンキンハゼの年間サイクル
春(4月~5月):新芽が展開。赤みを帯びたクリーム色の新緑が美しい。芽吹きは比較的遅め
初夏(5月~7月):黄緑色の穂状の花が咲く。蜜源として昆虫が集まる
夏(7月~9月):緑の葉が涼しげ。緑色の実がつき始める
秋(10月~11月):美しく紅葉。黒い実がはじけて白い種子が現れる
冬(12月~3月):落葉後も白い実だけが枝に残り、冬の景色を飾る

観察できる場所

ナンキンハゼは都市部を中心に、多くの場所で見られます。

  • 街路樹:幹線道路や住宅街の街路樹として広く植栽
  • 公園:大きな公園のシンボルツリーや並木として
  • 学校・施設:校庭や公共施設の庭園樹として
  • 庭園:個人宅の庭にも植えられる(斑入り品種もある)
  • 河川敷:西日本では野生化した個体も見られる

観察のポイント

季節ごとの楽しみ方

  • 春の新緑:赤みがかった新芽の色の変化を観察
  • 初夏の花:小さな花に集まる昆虫を観察
  • 秋の紅葉:緑から赤へのグラデーションを写真に収める
  • 冬の白い実:枯れ枝に残る白い実が雪のよう。ドライフラワーとして採取も

野鳥との関わり

ナンキンハゼは野鳥にとっても重要な樹木です。白いロウ質の種子は、ヒヨドリ、ムクドリ、キジバト、スズメ、シジュウカラなど多くの野鳥が好んで食べます。

特にヒヨドリは体内でロウ質を分解できるため、ナンキンハゼの実を積極的に食べます。冬の鳥の観察スポットとしても人気です。

生育の特徴

ナンキンハゼは非常に生長が速く、1年に1~2mも枝を伸ばします。どんな土壌でも育ち、剪定や移植に強いという使い勝手の良さがあります。

繁殖力について
種子から容易に発芽する繁殖力の強さから、近年では河川敷などで野生化する例も見られます。こぼれ種が発芽するほどの発芽力があるため、植栽場所には注意が必要です。

ナンキンハゼは春の新緑、初夏の花、秋の紅葉、冬の白い実と、一年を通じて私たちの目を楽しませてくれる樹木です。街を歩く際にナンキンハゼを見つけたら、季節ごとの変化を観察してみてはいかがでしょうか。ハート形の葉に込められた「心が通じる」という花言葉のように、四季の移ろいを静かに伝えてくれる樹木です。

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参考・免責事項
本記事は2025年10月18日時点の情報に基づいて作成されています。植物の特性には地域差や個体差があるため、記載内容が全ての個体に当てはまるとは限りません。記事内容は個人的な考察に基づくものであり、植物の管理や植栽については、専門家や自治体にご相談ください。野生化の状況は地域によって異なるため、最新の情報をご確認ください。