ドングリ観察記録2025|22種類の見分け方と秋の森の宝物

ドングリ観察記録2025|22種類の見分け方と秋の森の宝物

更新日:2025年10月18日

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秋の公園や道端で見かける身近な木の実「ドングリ」。一見すべて同じように見えますが、実は日本には約22種類ものドングリがあり、形も大きさもさまざまです。個人的な関心から、ドングリの種類や見分け方について調査・考察してみましたので、同じように関心をお持ちの方に参考になれば幸いです。

ドングリとは何か

ドングリとは、ブナ科の植物になる果実の総称で、漢字では「団栗」と書きます。植物学上「ドングリ」という分類があるわけではなく、特徴的な帽子のような「殻斗(かくと)」を被った硬い実の俗称です。実は秋の味覚として知られる「栗」もドングリの一種なのです。

分類と基本情報

基本情報
分類:ブナ科の果実の総称
種類:日本には約22種類
代表種:コナラ、クヌギ、マテバシイ、シラカシ、アラカシ
実りの時期:9月下旬~12月
分布:日本全国の森林、公園、街路樹

ドングリの基本構造

ドングリは主に2つの部分から構成されています。

  • 堅果(けんか):硬い果皮で種子を包む実の部分
  • 殻斗(かくと):実を覆う帽子のような部分(「ぼうし」「はかま」とも呼ばれる)
殻斗は総苞片が集まり、癒合変形、乾燥したもので、ブナ科の果実特有のものです。このため、かつてブナ科は殻斗科と呼ばれていました。

森の生態系での役割

ドングリは森の生態系において非常に重要な役割を果たしています。秋になると、リス、ネズミ、カケス、ツキノワグマなど多くの野生動物がドングリを食べ、冬を越すための栄養源とします。特にブナやミズナラの実はクマの主食となり、不作の年には人里への出没が増えることが知られています。

動物たちの食料
肥大した子葉に大量のデンプンを蓄え、秋の森に棲む動物たちの重要な食料となっています。ドングリの出来不出来が、野生動物の秋から冬の生存に大きな影響をもたらします。

主な種類と見分け方

見分けるポイント

ドングリを見分けるには、以下の3つのポイントをチェックします。

ドングリ識別の3つのポイント

  • 殻斗(ぼうし)の模様:うろこ状、横縞模様、トゲ付きなど種類によって異なる
  • 実の形と大きさ:細長い、丸い、三角錐など形はさまざま
  • 葉の特徴:木の葉の形、縁のギザギザ、葉の裏の毛の有無で判別

代表的なドングリの種類

コナラ(落葉樹)

最もポピュラーなドングリ。細長い楕円形で長さ1.5~2cm。殻斗はうろこ状の模様のベレー帽のような形。葉は縁が波打ち、裏面に白い毛があります。9月下旬~10月に実が落ちます。

クヌギ(落葉樹)

丸くて大きなドングリが特徴。直径2~3cm程度の球形。殻斗は毛が生えたようになっており、実を包み込むように覆います。葉の裏には毛がないため、コナラと区別できます。

マテバシイ(常緑樹)

細長い砲弾形のドングリ。殻斗には白いロウ状の物質が付着しており、取れやすく脱げやすいのが特徴。アクが少なく、生でも食べられる数少ないドングリです。

スダジイ(常緑樹)

関東地方で「シイの実」といえばこれを指します。殻斗が実全体を覆い、熟すと3つに裂けます。アクが少なく、炒って食べると美味しいことで知られています。

シラカシ・アラカシ(常緑樹)

公園や街路樹によく植えられる常緑樹。楕円形で長さ1.5~2cm。殻斗は横縞模様のベレー帽型。見分け方は葉の裏で、白っぽいのがアラカシ、そうでないのがシラカシです。

種類 形状 殻斗の特徴 食用
コナラ 細長い楕円形(1.5~2cm) うろこ状 アク抜き必要
クヌギ 丸い球形(2~3cm) 毛状 アク抜き必要
マテバシイ 細長い砲弾形 白いロウ状 生食可
スダジイ 全体を覆う(3つに裂ける) 殻斗が実を覆う 炒って美味
食べられるドングリ
シイ・マテバシイ属のドングリはアクが少なく、茹で・炒りのほかに生でも食べられます。コナラ属のドングリはアクが強いため、あく抜きが必要です。文部科学省の「日本食品標準成分表」によると、シイの実100gあたりのエネルギーは252kcal、マンガンやマグネシウムなどのミネラルやビタミンCも豊富に含まれています。

観察できる季節と場所

観察に適した時期

ドングリの季節
9月下旬~10月:コナラ、クヌギなど多くの種類が実を落とし始めます。
11月~12月:アラカシなど晩生の種類が実を落とします。最も実りの時期が遅いドングリです。

観察できる場所

ドングリは身近な場所で観察できます。

  • 公園:コナラ、クヌギ、シラカシなどが植えられていることが多い
  • 雑木林:コナラやクヌギなどの落葉広葉樹の林
  • 神社の境内:シイやカシの大木がよく見られる
  • 街路樹:シラカシやアラカシが植えられている
  • 山地の森林:ブナ、ミズナラなど標高の高い場所に自生

観察のコツ

ドングリ観察の楽しみ方

  • 複数の種類を集めて比較:形や大きさ、殻斗の模様の違いを観察
  • 木の葉も一緒に確認:ドングリだけでなく木の特徴も観察すると種類が特定しやすい
  • 動物の痕跡を探す:かじられた跡があれば、リスなどの動物が食べた証拠
  • 工作に活用:コマやトトロ、動物などの工作を楽しめる

ドングリは秋の森からの贈り物です。同じように見えても、よく観察すると一つ一つが異なる個性を持っています。お子さんと一緒にドングリ拾いを楽しみながら、自然の多様性を感じてみてはいかがでしょうか。

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参考・免責事項
本記事は2025年10月18日時点の情報に基づいて作成されています。ドングリの種類や特徴には地域差や個体差があるため、記載内容が全ての個体に当てはまるとは限りません。記事内容は個人的な考察に基づくものであり、専門的な判断については植物学の専門家にご相談ください。野生のドングリを食べる際は、十分にあく抜きを行い、アレルギーや体質を考慮した上で自己責任で行ってください。