アレチヌスビトハギ観察記録2025|ひっつき虫の正体と驚異の繁殖力

アレチヌスビトハギ観察記録2025|ひっつき虫の正体と驚異の繁殖力

更新日:2025年10月18日

この記事を音声で聞く

散歩の後、服に緑色の小さな実がびっしりとくっついていた経験はありませんか?その正体は「アレチヌスビトハギ」かもしれません。可憐な紫の花を咲かせながらも、強力な繁殖力で広がり続ける外来植物です。個人的な関心から調査してみましたので、参考になれば幸いです。

アレチヌスビトハギの基本情報

アレチヌスビトハギ(荒地盗人萩)は、北アメリカ原産のマメ科シバハギ属の多年草です。1970年代以降に日本に広がった外来植物(帰化植物)で、現在では関東以西を中心に全国的に分布しています。

分類と基本データ

基本情報
科名:マメ科シバハギ属
学名:Desmodium paniculatum
英名:Panicled Tick Trefoil
原産地:北アメリカ
草丈:50~100cm
花期:7~9月
果期:9~10月
生育環境:荒地、道端、空き地、河川敷

名前の由来

「アレチヌスビトハギ」という名前には、3つの要素が含まれています。

  • アレチ(荒地):荒れ地でも旺盛に生育することから
  • ヌスビト(盗人):実の形が泥棒の足跡に似ていること、知らぬ間に衣服にくっついて侵入する様子から
  • ハギ(萩):日本在来のハギに似た姿から
別名として「クッツキムシ」「ヒッツキムシ」とも呼ばれ、その強力な付着力から子供たちの間では有名な植物です。

外来種としての影響

アレチヌスビトハギは比較的新しい外来種ですが、その強い繁殖力から近年爆発的に増加しています。荒地や休耕地だけでなく、公園や道端など身近な場所にも広がり、在来植物の生育域を圧迫する可能性が懸念されています。

特徴と見分け方

花の特徴

アレチヌスビトハギは7~9月にかけて、美しい紅紫色の蝶形花を咲かせます。花の大きさは6~8mm程度で、マメ科特有の蝶のような形をしています。

花の特徴
色:紅紫色(しぼむと青色~赤色に変化)
大きさ:長さ6~8mm
形:蝶形花(マメ科特有)
花序:円錐花序で多数の花をつける
開閉:昼間は開き、夕方にはしぼむ

葉の特徴

葉は3枚の小葉からなる三出複葉です。頂小葉は狭卵形から卵形で、長さ4~10cm、幅1~3cm。側小葉は左右非対称で頂小葉より小さくなります。葉の両面に軟毛があり、裏面は多毛で淡色です。

最大の特徴:ひっつき虫の実

アレチヌスビトハギの最も特徴的なのは、その実(豆果)です。扁平な節果で、通常3~5個の小節果からなります。

特徴 詳細
形状 ほぼ三角形で角が丸い
節数 3~5個(多いものは6個)
大きさ 長さ4~7mm、幅3~4.5mm
表面 細かい鉤(かぎ)状の毛が密生
緑色から茶色に変化
ひっつき虫の仕組み
実の表面に密生する鉤状の細かい毛が、マジックテープのように衣服の繊維に絡みつきます。一度くっつくと非常に取れにくく、ウエットティッシュで拭き取るのが効果的です。

在来種ヌスビトハギとの見分け方

日本在来のヌスビトハギと混同されやすいですが、明確な違いがあります。

特徴 アレチヌスビトハギ ヌスビトハギ
葉の枚数 3小葉 頂小葉のみ目立つ
実の節数 3~5個 2個
くびれの深さ 浅い 深い(点状)
花の大きさ 6~8mm 4~5mm
付着力 非常に強い やや弱い

驚異的な繁殖力

アレチヌスビトハギの駆除が困難な理由は、その強靭な地下茎にあります。

繁殖戦略

  • 強靭な地下茎:地下に太く硬い茎を持ち、地上部を刈り取っても復活
  • 種子の大量生産:1株あたり数百個の種子をつける
  • 効率的な種子散布:人や動物の衣服・毛にくっついて長距離移動
  • 断片からの再生:千切れた根の断片からでも新芽が出る

観察できる季節と場所

観察に適した時期

アレチヌスビトハギの年間サイクル
4月~5月:新芽が地下茎から芽吹く
7月~9月:紅紫色の花が咲く時期。蝶形花が美しい
9月~10月:実が成熟し、衣服にくっつきやすくなる
11月~3月:地上部は枯れるが、地下茎は生き続ける

観察できる場所

アレチヌスビトハギは都市部から農村部まで、幅広い環境で見られます。

  • 荒地・空き地:名前の通り、管理されていない荒地を好む
  • 道端・歩道脇:人通りの多い場所で種子を散布
  • 河川敷・堤防:水辺の開けた環境
  • 公園・運動場の周辺:人の出入りが多い場所
  • 休耕地・耕作放棄地:農地の周辺に繁茂

観察時の注意点

実がくっつかないための対策

  • 服装:ナイロン製の滑らかな素材を着用(毛羽立った生地は避ける)
  • 通行ルート:草が茂った場所をできるだけ避ける
  • ペット連れ:犬の毛にもくっつくので、散歩後は必ずチェック
  • 取り除き方:ウエットティッシュで拭き取る、粘着テープで取る

生態系への影響

アレチヌスビトハギは外来種として、以下のような影響が懸念されています。

  • 在来のヌスビトハギやハギ類との競合
  • 荒地や河川敷での優占種化
  • 農地周辺での雑草化
  • 種子の強力な付着による急速な分布拡大
一方で、可憐な花は観賞価値があり、マメ科植物として土壌に窒素を固定する役割も果たしています。鉢植えで管理しながら観察する愛好家もいるほどです。

身近な場所で見かけることの多いアレチヌスビトハギ。厄介な雑草として扱われることが多いですが、その巧みな繁殖戦略と生命力の強さは、植物の生存戦略として興味深いものです。散歩の際に見かけたら、花の美しさと実の仕組みをじっくり観察してみてはいかがでしょうか。

動画で見る

YouTubeで見る ↗

参考・免責事項
本記事は2025年10月18日時点の情報に基づいて作成されています。植物の特性には地域差や個体差があるため、記載内容が全ての個体に当てはまるとは限りません。記事内容は個人的な考察に基づくものであり、駆除や管理については、専門家や自治体にご相談ください。外来種の扱いについては、地域の条例やガイドラインに従ってください。