カタバミ観察記録2025|武家が愛した繁殖力と家紋の秘密

カタバミ観察記録2025|武家が愛した繁殖力と家紋の秘密

更新日:2025年10月18日

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道端や庭先でよく見かけるカタバミ。クローバーに似た可愛らしい葉を持つこの植物は、実は武家が家紋に使うほど縁起が良いとされてきました。その強い繁殖力と、五大家紋の一つに数えられる歴史的背景について調査しました。参考になれば幸いです。

カタバミの基本情報

カタバミは、カタバミ科カタバミ属の多年草で、世界中に広く分布しています。日本でも全国に自生し、道端や空き地、農地、庭など至る所で見られる身近な植物です。

分類と分布

基本情報
科名:カタバミ科カタバミ属
学名:Oxalis corniculata
分布:世界中に分布、日本全土
草丈:5~20cm
花期:4~11月

カタバミ属の植物は世界に約850種も存在するといわれており、日本では6種類が自生し、さらに7種類ほどの外来種が帰化植物として定着しています。

名前の由来

カタバミという名前は、夜になると葉が閉じて、半分になったように見えることに由来します。漢字では「片喰」「酢漿草」「傍食」などと書かれ、それぞれ異なる意味を持っています。

「片喰」は、ハート形の葉が一部食べられて欠けているように見えることから名付けられました。「酢漿草」は、葉や茎にシュウ酸を含み酸っぱい味がすることに由来します。

学名のOxalisは、ギリシャ語で「酸っぱい」を意味するoxysから来ており、この属の植物がシュウ酸を含んで酸っぱいことを表しています。

特徴と見分け方

花の特徴

カタバミは4月から11月にかけて、黄色い小さな5弁花を咲かせます。花の大きさは直径8mm程度で、長い期間にわたって咲き続けます。雄しべは長いものと短いものが5本ずつ、雌しべの花柱は5本です。

花の特徴
花弁:5枚の黄色い花弁
花径:約8mm
雄しべ:長短各5本
雌しべ:5本の花柱
開花:日中に開き、夜や曇りの日は閉じる

葉の特徴

カタバミの最大の特徴は、ハート形の小葉が3枚集まった三出複葉です。葉は夜になると閉じる性質があり、これは水分の蒸発を防ぐためと考えられています。

葉や茎にはシュウ酸を含んでいるため、かなり酸っぱい味がします。この酸味から「酸葉(すいば)」「スイモグサ」という別名もあります。

クローバーとの見分け方

カタバミはクローバー(シロツメクサ)とよく似ていますが、明確な違いがあります。

特徴 カタバミ クローバー
葉の形 ハート形 丸形
葉の模様 なし 白い線
葉の閉じ方 外側に閉じる 内側に閉じる
花の色 黄色 白またはピンク

繁殖力の強さ

カタバミは非常に繁殖力が強く、駆除が困難な植物として知られています。地下に球根を持ち、さらにその下に大根のような根を下ろします。地を這う匍匐茎をよく伸ばし、地表に広がります。

繁殖の特徴
果実は長さ1.5cmほどの円柱状で、熟すとわずかな振動ではじけて、周囲1mほどの範囲に種子を勢いよく飛ばします。手で引き抜いた程度では、根が途中でちぎれ、またそこから芽が出てくるため、根絶が非常に困難です。

家紋と文化的背景

五大家紋の一つ「片喰紋」

カタバミは、その強い繁殖力が「家が絶えない」「子孫繁栄」に通じるとして、武家の家紋として人気を博しました。片喰紋は五大家紋(他に鷹の羽、木瓜、藤、桐)の一つに数えられます。

戦国大名の長宗我部元親や長宗我部盛親が片喰紋を用いていました。平安時代には牛車の紋として使用されていた記録も残っています。

家紋のデザイン

片喰紋は、ハート型の葉が3つ描かれるのが基本で、それに丸や剣、蔓などを加えることがあります。3枚の小葉の隙間を3本の剣に見立てた「剣片喰」が特に多く用いられました。

実用的な利用

カタバミは、真鍮の鏡や仏具を磨くために使われていたことから、別名「鏡草」とも呼ばれています。このことから、「輝く心」という花言葉がつけられました。

カタバミの民間利用

  • 金属磨き:真鍮の鏡や仏具の研磨に使用
  • 薬用:生葉をすりつぶした絞り汁を虫刺されや皮膚病に外用
  • 食用:茎と葉を天ぷらやサラダに(シュウ酸由来の酸味)
  • 血止め:小さな傷の止血に使用(別名チドメグサ)

花言葉

カタバミの花言葉には「輝く心」「喜び」があります。「喜び」の由来は、スペインやフランスで「ハレルヤ」と呼ばれることに由来し、復活祭でハレルヤが唱えられる時期に花が咲き始めることに因んでいるといわれています。

動画で詳しく見る

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参考・免責事項
本記事は2025年10月18日時点の情報に基づいて作成されています。植物の特性には個体差があるため、記載内容が全ての個体に当てはまるとは限りません。記事内容は個人的な考察に基づくものであり、植物の利用や駆除については、専門家にご相談ください。重要な判断については、複数の情報源を参考にし、自己責任で行ってください。