偏微分 勾配 ∇(ナブラ) 方向微分
偏微分とは
偏微分(Partial Derivative)
多変数関数 f(x, y, ...) において、1つの変数だけを変化させたときの変化率。
∂f/∂x : x で偏微分(他の変数は定数扱い)
∂f/∂y : y で偏微分(他の変数は定数扱い)
例
f(x, y) = x² + 3xy + y² のとき
∂f/∂x = 2x + 3y(yは定数として扱う)
∂f/∂y = 3x + 2y(xは定数として扱う)
勾配ベクトル
勾配(Gradient)
すべての偏微分をベクトルにまとめたもの。
∇f = (∂f/∂x₁, ∂f/∂x₂, ..., ∂f/∂xₙ)
記号:∇f(ナブラf)、grad f
勾配ベクトルの重要な性質:
| 性質 | 意味 |
|---|---|
| 方向 | 関数が最も急激に増加する方向 |
| 大きさ | その方向での変化率の大きさ |
| -∇f の方向 | 関数が最も急激に減少する方向 |
等高線と勾配
2変数関数をグラフにすると曲面になる。同じ高さの点を結ぶと等高線。勾配ベクトルは等高線に垂直で、山を登る最も急な方向を指す。
ヤコビアンとヘッセ行列
ヤコビアン(Jacobian)
ベクトル値関数 f: ℝⁿ → ℝᵐ の偏微分をまとめた行列。
J = [∂fᵢ/∂xⱼ](m×n 行列)
多次元への拡張における「導関数」の役割。
ヘッセ行列(Hessian)
2階偏微分をまとめた行列。
H = [∂²f/∂xᵢ∂xⱼ]
曲面の曲がり具合を表す。最適化の収束性に関係。
実務での応用
WEB開発での応用
感度分析:各パラメータが結果にどれだけ影響するかを偏微分で評価。
最適化問題:コスト関数の最小化(物流、スケジューリング)。
シミュレーション:物理シミュレーションでの力の計算。
AI/MLでの応用
損失関数の勾配:各パラメータをどう変えれば損失が減るかを示す。
バックプロパゲーション:勾配を逆向きに伝播させてすべてのパラメータの勾配を計算。
学習率の調整:ヘッセ行列の情報を使った高度な最適化手法(Newton法、Adam)。
深掘りリンク
- Wikipedia: 偏微分
- Wikipedia: 勾配
- 動画:3Blue1Brown「Gradient descent」
- 次のステップ:連鎖律、自動微分