第1章 開発文書の用語整理

1.1 開発文書の基本用語

IT開発では様々な文書が作成される。まず、混同しやすい5つの基本用語を整理する。

用語 英語 答える問い
企画 Planning なぜ作るのか? 業務効率化のためCRMを導入したい
要件 Requirements 何を満たすべきか? 顧客情報を一元管理できること
仕様 Specification 何をどう振る舞うか? 検索ボタン押下で顧客一覧を表示
設計 Design どう作るか? MySQL使用、顧客テーブルは正規化
計画 Plan いつ誰がやるか? 3月末リリース、開発者3名体制
ポイント
「企画→要件→仕様→設計」は抽象度が高いものから低いものへと具体化される流れ。「計画」は時間・リソースの軸であり、他の4つとは異なる次元の概念である。

1.1.1 企画と要件の違い

企画はビジネス上の目的・背景を示し、「なぜこのシステムが必要なのか」を説明する。一方、要件はその目的を達成するために「システムが満たすべき条件」を定義する。

観点 企画 要件
記述者 経営層、企画部門 システム部門、開発者
読み手 経営判断者、投資者 開発者、顧客
抽象度 高い(ビジネス視点) 中程度(システム視点)

1.1.2 仕様と設計の違い

仕様は「何を作るか(What)」を定義し、設計は「どう作るか(How)」を定義する。この違いは第1章で最も重要な概念である。

観点 仕様(What) 設計(How)
記述内容 システムの振る舞い・機能 実現方法・構造
「ログインボタン押下で認証する」 「JWTトークンを使用し認証する」
変更可能性 顧客合意が必要 開発者判断で変更可

詳細は 1.2 仕様書 vs 設計書 で解説する。

1.1.3 本章で解決する疑問

この章で扱う疑問
・設計書と仕様書の違いは? → 1.2節
・仕様書と説明書の違いは? → 1.3節
・要求と要件の違いは? → 1.4節
・外部設計と内部設計の違いは? → 1.5節
・文書の全体像は? → 1.6節
参考資料
[1] IPA「機能要件の合意形成ガイド」
[2] IEEE 830-1998 Recommended Practice for Software Requirements Specifications