NTTデータ「AIネイティブ開発」考察|2026年度導入で変わるシステム開発の未来
NTTデータ「AIネイティブ開発」考察|2026年度導入で変わるシステム開発の未来
更新日:2025年1月1日
1. AIネイティブ開発とは何か
NTTデータグループが2026年度中に導入を予定している「AIネイティブ開発」は、従来のシステム開発手法とは根本的に異なるアプローチを採用している。従来の開発では、人間のエンジニアが作業しやすいようにプロセスが設計されていたが、AIネイティブ開発では開発工程そのものを生成AIに適した形に単純化する点が特徴である。
開発工程を人間ではなく生成AIに合わせて単純化し、ITシステム開発をほぼ生成AIが担う手法。人による作業を大幅に削減することを目指す。
NTTデータが見据えている適用範囲は、製造工程(コーディング)だけにとどまらない。上流工程である要件定義を含め、設計工程、製造工程、テスト工程という一連の流れ全てにおいて生成AIを活用する計画である。これは業界において極めて包括的なアプローチといえる。
要件定義工程では、顧客要件の洗い出しやアイディエーション、抽象的な要件の言語化などに生成AIを活用する。また、要件定義や設計書をもとにリスクや見積もりの妥当性を判断するチェックにも適用される予定である。
2. 背景にある「2025年の崖」問題
NTTデータがこの取り組みを進める背景には、日本のIT業界が直面する深刻な課題がある。経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で指摘された「2025年の崖」問題である。
日本企業がDXに取り組まなかった場合、2025年以降に発生し得る深刻な経済的損失を指す概念。レガシーシステムの老朽化とIT人材不足が複合的に作用し、最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると試算されている。
| 年 | IT人材不足数 | 備考 |
|---|---|---|
| 2018年 | 約22万人 | 経済産業省調査時点 |
| 2025年 | 約43万人 | DXレポート予測 |
| 2030年 | 最大約79万人 | 経済産業省予測 |
この人材不足に対し、NTTデータは生成AIによる開発効率化を抜本的な解決策として位置づけている。すでに実証段階では、ある案件の製造工程において7割の合理化を達成し、工期短縮と生産性約3倍向上という成果を上げている。
3. NTTデータの具体的な取り組みと今後の展望
NTTデータグループは、AIネイティブ開発の実現に向けて複数の施策を並行して進めている。
3.1 人材育成
2024年10月から全社員向けに生成AI人財育成フレームワークを整備し、4段階のレベル定義に基づく研修を実施している。実践研修(Yellowbelt)の修了者は2025年10月時点で7万人を超え、当初目標の2026年度末までに3万人という数値を大幅に前倒しで達成した。今後は2027年度までに全社員約20万人への拡大を計画している。
3.2 新たなソリューション
2026年4月からは、企業・利用者が自らの業務に最適なAIを開発可能にする基盤「LITRON Builder」の提供を開始する。自然言語またはコーディングによってエージェント型AIを開発できる環境を実現し、高度なITスキルがなくても業務特化型AIを構築可能にする。
| 項目 | 目標値 | 時期 |
|---|---|---|
| 実践的生成AI人財 | 約20万人(全社員) | 2027年度まで |
| LITRON関連売上 | 累計200億円規模 | 2027年度末まで |
| 生成AI関連事業売上 | 累計1000億円 | 2027年まで |
3.3 契約形態の変革
システム構築の受注金額は、従来「人月型」契約が主流であった。しかし生産性が大幅に向上すれば、この収益モデルは見直しを迫られる。NTTデータは成果報酬型など新たな契約形態の検討を進めており、これはシステム業界全体が労働集約型の事業モデルから転換する契機となる可能性がある。
今後注目すべきポイント
- 2026年度の本格導入:AIネイティブ開発の実用化段階における成果と課題
- 他社の追随:業界大手の動向がSIer全体に与える影響
- 契約形態の変化:人月商売から成果報酬型への移行の進捗
- 品質担保の仕組み:AIが生成したコードの品質管理手法の確立
本記事は2025年1月1日時点の公開情報に基づいています。
[1] 日本経済新聞「生成AIがシステム丸ごと開発 NTTデータ、IT人材不足に抜本策」2024年12月31日
[2] NTTデータ DATA INSIGHT「生成AIを使ったNTTデータ流『新時代のシステム開発』とは」
[3] NTTデータグループ プレスリリース「実践的な生成AI人財育成を2027年度までにグローバル全社員へ拡大」2025年10月29日
[4] 経済産業省「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」2018年
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