RDB入門

更新日:2025年12月28日

本コンテンツは、リレーショナルデータベース(RDB)の理論と実践を体系的に解説するガイドである。E.F.Coddが提唱した関係モデルの数学的基礎から始まり、正規化理論、SQL言語、データベース設計、トランザクション管理までを8章に分けて解説する。NoSQLやKVSとの比較を通じてRDBの位置づけを明確にし、主要なRDBMS製品とクライアントツールの紹介も行う。業務システム開発に携わるエンジニアを対象とし、「なぜそうなっているか」を理解しながら実践的な知識を習得することを目的とする。

1. 概要

リレーショナルデータベース(RDB)は、1970年にIBMのE.F.Coddが発表した論文「A Relational Model of Data for Large Shared Data Banks」に基づくデータベースモデルである。データを「テーブル(リレーション)」として表現し、テーブル間の関係を「キー」によって定義する。この数学的に厳密なモデルは、データの整合性を保証し、柔軟なデータ操作を可能にした。

RDBは現在も業務システムの中核として広く使用されている。会計システム、在庫管理、顧客管理など、データの整合性が重要な領域ではRDBが第一選択となる。一方、近年はNoSQLデータベースやKVS(Key-Value Store)も普及しており、用途に応じた使い分けが求められる。本コンテンツでは、RDBの理論的背景を理解しつつ、実践的なSQL操作やデータベース設計の知識を習得することを目指す。

2. 章一覧

Table 1. 章構成一覧

タイトル 内容
第1章 RDBとは何か データベースの歴史、RDB登場の背景、NoSQL・KVSとの比較
第2章 関係モデルの基礎 集合論との関係、リレーション・タプル・属性、ドメイン、関係代数
第3章 キーと制約 主キー、外部キー、一意制約、参照整合性
第4章 正規化 関数従属性、第1〜第3正規形、BCNF、正規化の目的と限界
第5章 SQL基礎 SELECT/INSERT/UPDATE/DELETE、WHERE句、JOIN
第6章 SQL応用 集約関数、サブクエリ、ビュー、インデックス
第7章 ツールと環境 MySQL/PostgreSQL/SQLite比較、DBeaver、MySQL Workbench、pgAdmin
第8章 設計と運用 ER図、テーブル設計、ACID特性、トランザクション、バックアップ

3. RDBと他のDBの比較

RDBの特徴を理解するため、他のデータベースモデルとの比較を示す。

Table 2. データベースモデル比較

項目 RDB NoSQL(ドキュメント型) KVS
データ構造 テーブル(行と列) JSON/BSON キーと値
スキーマ 固定(事前定義) 柔軟 なし
トランザクション ACID保証 限定的 限定的
スケーラビリティ 垂直スケール 水平スケール 水平スケール
代表例 MySQL, PostgreSQL MongoDB Redis
適用領域 業務システム、会計 コンテンツ管理、ログ キャッシュ、セッション

4. 前提知識

本コンテンツを効果的に学習するためには、以下の知識が前提となる。

Table 3. 前提知識一覧

分野 内容 推奨レベル
プログラミング 変数、配列、条件分岐、ループの概念 初級以上
数学 集合論の基礎(集合、要素、部分集合) 高校数学程度
コマンドライン ターミナル/コマンドプロンプトの基本操作 初級以上

5. 学習の進め方

本コンテンツは全8章で構成され、約12〜16時間での完了を想定している。各章は独立して参照可能であるが、順番に学習することで体系的な理解が得られる。

Table 4. 推奨学習時間

学習時間目安 習得目標
第1章 1〜2時間 RDBの歴史と位置づけの理解
第2章 2〜3時間 関係モデルの数学的基礎の理解
第3章 1〜2時間 キーと制約の設計能力
第4章 2〜3時間 正規化の理論と実践
第5章 2〜3時間 基本的なSQL操作
第6章 2〜3時間 高度なSQL操作
第7章 1〜2時間 ツールの選定と環境構築
第8章 2〜3時間 データベース設計と運用の実践

6. 参考文献

[1] E.F.Codd, "A Relational Model of Data for Large Shared Data Banks", Communications of the ACM, 1970

[2] MySQL Documentation, https://dev.mysql.com/doc/

[3] PostgreSQL Documentation, https://www.postgresql.org/docs/

[4] SQLite Documentation, https://www.sqlite.org/docs.html

[5] DBeaver Documentation, https://dbeaver.com/docs/

参考・免責事項
本コンテンツは2025年12月時点の情報に基づいて作成されています。各RDBMS製品は活発に開発が進められており、機能や仕様が変更される可能性があります。最新情報は公式ドキュメントをご確認ください。