高校英語の仮定法を基礎から検討|if文の種類と使い方の整理

高校英語の仮定法を基礎から検討|if文の種類と使い方の整理

更新日:2025年6月13日

高校英語で多くの学習者がつまずく文法項目の一つに「仮定法」があります。「仮定法過去なのに現在のことを表す」「時制が一致しない」といった特殊なルールに混乱する方も多いのではないでしょうか。個人的にも英語学習において仮定法は理解に時間がかかった分野でした。今回は仮定法の基本概念から各種構文パターン、試験対策のポイントまで、改めて整理・考察してみました。英文法の復習や試験対策として、同じように仮定法に苦手意識をお持ちの方の参考になれば幸いです。
高校英語の仮定法を基礎から検討|if文の種類と使い方の整理

1. 仮定法の基本概念と直説法との違い

1.1 仮定法とは何か

仮定法とは「もし~なら、…なのに」「もし~だったら、…だったのに」のように、現実とは異なる仮定や実現不可能なことを表現する文法形式である。日本語でも「もし私が鳥だったら空を飛べるのに」といった表現を使うが、これは現実には人間が鳥になることはありえない仮定であり、英語ではこのような表現に仮定法を用いる。

仮定法の最大の特徴は、現実ではないことを表すために「時制をひとつ前にずらす」という点にある。現在の事実に反することを述べる場合は過去形を使い、過去の事実に反することを述べる場合は過去完了形を使う。この時制のずれが仮定法を理解する上での核心となる。

1.2 直説法と仮定法の違い

if文には「直説法」と「仮定法」の2種類があり、この区別が重要である。直説法は実際に起こりうる可能性のあることを述べ、仮定法は現実にはありえないことや実現の可能性が低いことを述べる。

直説法と仮定法の見分け方
直説法:動詞が現在形(実際に起こりうる条件)
仮定法:動詞が過去形または過去完了形(現実とは異なる仮定)
区分 例文 意味
直説法 If it rains tomorrow, I will stay home. もし明日雨が降ったら、家にいます(実際に起こりうる)
仮定法 If I were a bird, I would fly to you. もし私が鳥なら、君のところに飛んでいくのに(ありえない仮定)

1.3 なぜ時制をずらすのか

仮定法で時制をずらす理由は、現実との距離を表すためである。過去形を使うことで「現実から離れた話をしている」という信号を読み手・聞き手に送ることができる。これは英語という言語が持つ仕組みであり、日本語には存在しない発想である。そのため日本語話者にとって仮定法の習得が難しく感じられる原因の一つとなっている。

2. 仮定法の種類と構文パターン

2.1 仮定法過去

仮定法過去は「現在の事実に反する仮定」を表す。名称に「過去」とあるが、表現しているのは現在のことである点に注意が必要である。現在ありえないことを述べるために、便宜上過去形を使用する。

仮定法過去の基本形
If + 主語 + 動詞の過去形, 主語 + would/could/might + 動詞の原形
(もし~なら、…なのに)
例文 意味 現実
If I were a bird, I would fly to you. もし私が鳥なら、君のところに飛んでいくのに 私は鳥ではない
If I had enough money, I could buy the car. もし十分なお金があれば、その車を買えるのに お金が足りない
If I knew her number, I would call her. もし彼女の番号を知っていれば、電話するのに 番号を知らない

仮定法過去でbe動詞を使う場合、主語に関係なくwereを用いることが多い。口語ではwasも使われるが、フォーマルな文章や試験ではwereを使うのが一般的である。

2.2 仮定法過去完了

仮定法過去完了は「過去の事実に反する仮定」を表す。すでに起こってしまった過去の出来事について「あの時~だったら」と後悔や願望を述べる際に用いる。

仮定法過去完了の基本形
If + 主語 + had + 過去分詞, 主語 + would/could/might + have + 過去分詞
(もし~だったら、…だっただろうに)
例文 意味 現実
If I had studied harder, I could have passed the exam. もっと勉強していれば、試験に受かっていたのに 勉強しなかったので不合格だった
If we had left earlier, we would not have missed the train. もっと早く出発していれば、電車に乗り遅れなかっただろうに 出発が遅れて電車に乗り遅れた
If I had had enough money, I could have bought it. お金が十分にあったなら、それを買えたのに お金がなくて買えなかった

2.3 仮定法未来

仮定法未来は「万が一~したら」という、実現の可能性がきわめて低い未来のことを仮定する表現である。shouldまたはwere toを用いて表す。

仮定法未来の基本形
If + 主語 + should + 動詞の原形, 主語 + would/will + 動詞の原形
If + 主語 + were to + 動詞の原形, 主語 + would + 動詞の原形
(万が一~なら、…だろう)

shouldを使う場合は「可能性は低いがゼロではない」というニュアンスがあり、were toを使う場合は「ほぼ実現しない」という意味合いが強くなる。

2.4 仮定法の種類まとめ

種類 表す内容 if節の形 主節の形
仮定法過去 現在の事実に反する仮定 動詞の過去形 would/could + 原形
仮定法過去完了 過去の事実に反する仮定 had + 過去分詞 would/could + have + 過去分詞
仮定法未来 実現可能性の低い未来 should/were to + 原形 would/will + 原形

3. 重要表現と試験対策のポイント

3.1 I wish + 仮定法

I wishは「~だったらいいのに」という願望を表す表現で、後ろに仮定法を伴う。現在の願望には仮定法過去を、過去の願望には仮定法過去完了を用いる。

時制 例文 意味
現在の願望 I wish I were a bird. 私が鳥だったらいいのに
現在の願望 I wish I could speak English fluently. 英語が流暢に話せたらいいのに
過去の願望 I wish I had studied harder. もっと勉強しておけばよかった

If onlyもI wishとほぼ同じ意味で使われ、より強い願望を表す。I wish I could fly.とIf only I could fly.は同様の意味を持つ。

3.2 as if / as though + 仮定法

as if(as though)は「まるで~のように」という意味で、事実とは異なることを比喩的に表現する際に用いる。主節と同じ時点のことを述べる場合は仮定法過去を、主節より前のことを述べる場合は仮定法過去完了を使う。

例文 意味
He speaks as if he were Italian. 彼はまるでイタリア人のように話す
She talked as if she had seen a ghost. 彼女はまるで幽霊を見たかのように話した

3.3 If it were not for / If it had not been for

「もし~がなければ」という意味を表す慣用表現である。現在のことにはIf it were not forを、過去のことにはIf it had not been forを用いる。Without~やBut for~への書き換えも頻出である。

書き換えパターン
If it were not for your help, I couldn't do it.
= Without your help, I couldn't do it.
= But for your help, I couldn't do it.
(あなたの助けがなければ、私はそれができないだろう)

3.4 It is time + 仮定法過去

「もう~する時間だ」「そろそろ~すべきだ」という意味を表す。It is about timeで「そろそろ」、It is high timeで「とっくに」というニュアンスになる。

例文 意味
It is time you went to bed. もう寝る時間だ
It is high time you started studying. とっくに勉強を始めるべき時間だ

3.5 試験対策のポイント

仮定法を見抜くチェックポイント

  • if節の動詞が過去形か:現在形なら直説法、過去形なら仮定法の可能性
  • 主節にwould/could/mightがあるか:これらの助動詞の過去形は仮定法の目印
  • be動詞がwereになっているか:主語がI/he/sheでもwereなら仮定法
  • 文脈が現実か非現実か:ありえない内容を述べているかどうか確認

よくある間違いと対策

  • 時制の混同:仮定法過去は「現在」のこと、仮定法過去完了は「過去」のことを表す
  • 直説法との混同:実現可能なことには直説法、ありえないことには仮定法を使う
  • 助動詞の選択ミス:would(~だろう)、could(~できるだろう)、might(~かもしれない)の違いを意識する

仮定法の学習において最も重要なのは、「現実とは異なることを表すために時制をずらす」という基本原則を理解することである。この原則さえ押さえておけば、個々の構文パターンは応用として理解しやすくなる。また、仮定法は必ずしも自分で使えるようになる必要はなく、読んだり聞いたりしたときに理解できれば十分という考え方もある。仮定法を使わなくても、よりシンプルな表現で同じ内容を伝えることは可能だからである。

参考・免責事項
本記事は2025年6月13日時点の情報に基づいて作成されています。記事内容は個人的な考察に基づくものであり、英語学習の効果には個人差があります。専門的な指導については英語教育の専門家にご相談ください。文法の解釈や試験対策については、各試験の公式情報や教科書を併せてご確認いただくことをお勧めします。