切削速度計算式考察2025|旋盤加工の回転数を実例で解説

切削速度計算式考察2025|旋盤加工の回転数を実例で解説

更新日:2025年10月20日

旋盤やフライス盤での加工において、適切な回転数の設定は加工品質と工具寿命を左右する重要な要素です。現場でよく使われる「N = 1000V / πD」という計算式について、実際の加工条件を用いて考察してみました。機械加工に携わる方や、これから学ぼうとする方の参考になれば幸いです。

切削速度計算の基本知識

切削速度計算式の意味

機械加工における回転数の計算式は以下の通りです。

基本計算式
N = 1000V / πD

N:回転数(min⁻¹ または rpm)
V:切削速度(m/min)
D:直径(mm)
π:円周率(3.14159...)

この式は、工作物や工具の直径と、材質に応じた適切な切削速度から、機械に設定すべき回転数を算出するためのものです。切削速度は材質や工具によって推奨値が定められており、それを基準に計算を行います。

各パラメータの役割

計算式に登場する各パラメータには、それぞれ重要な意味があります。

切削速度(V)は、刃物が材料を切削する際の速度を表します。材質によって適切な値が異なり、例えばアルミニウムは80-150m/min、一般鋼材は50-100m/min程度が目安とされています。

直径(D)は、旋盤加工では被削材の直径、フライス加工では工具の直径、穴あけ加工ではドリルの直径を指します。この値によって回転数が大きく変わります。

直径が小さいほど回転数を高く設定する必要があり、直径が大きいほど回転数は低くなります。これは、周速を一定に保つための必然的な関係です。

具体的な計算例とデータ

実例1:アルミニウム材の旋盤加工

最も一般的な加工条件での計算例を見てみましょう。

加工条件
材質:アルミニウム合金
切削速度(V):80 m/min
工作物直径(D):50 mm

この条件で計算すると:

N = 1000 × 80 / (3.14159 × 50)
N = 80000 / 157.08
N ≒ 509 min⁻¹(rpm)

つまり、旋盤の回転数を約500rpmに設定すれば適切な切削速度が得られます。

実例2:鉄鋼材の旋盤加工

加工条件
材質:一般構造用鋼材(SS400)
切削速度(V):60 m/min
工作物直径(D):30 mm

計算:

N = 1000 × 60 / (3.14159 × 30)
N = 60000 / 94.25
N ≒ 637 min⁻¹(rpm)

材質別の切削速度目安

材質 切削速度(m/min) 備考
アルミニウム合金 80-150 高速切削可能
一般鋼材(SS400) 50-80 標準的な速度
ステンレス鋼 30-60 難削材のため低速
真鍮 100-200 被削性良好
重要なポイント
上記の切削速度は超硬工具を使用した場合の一般的な目安です。ハイス工具の場合は、これらの値の50-70%程度に下げる必要があります。また、仕上げ加工と荒加工でも適切な速度が異なります。

実践での活用ポイント

回転数設定の実務的な考え方

実際の現場では、計算値をそのまま使うのではなく、いくつかの要素を考慮して調整します。

回転数設定の3段階アプローチ

  • 第1段階:理論値の計算:上記の計算式で基準となる回転数を算出します。
  • 第2段階:機械の制約確認:使用する機械の回転数範囲を確認し、段階的な設定値に調整します。多くの旋盤は無段変速ではなく、決められた回転数しか選択できません。
  • 第3段階:加工状態の観察:実際に切削を開始し、切りくずの状態、振動、音などを確認しながら微調整を行います。

送り速度との関係

回転数が決まったら、次は送り速度(f)の設定が必要です。送り速度は「mm/rev」で表され、1回転あたりにどれだけ工具が進むかを示します。

一般的な目安として、荒加工では0.2-0.5mm/rev、仕上げ加工では0.05-0.2mm/rev程度が使われます。材質が硬いほど、また直径が小さいほど、送り速度は控えめに設定します。

計算式の応用
同じ計算式は、フライス加工におけるエンドミルの回転数計算や、ドリル加工での回転数設定にも使用できます。その場合、Dはそれぞれ工具の直径を使用します。

安全と品質を保つために

適切な回転数の設定は、単に計算式に従うだけでなく、以下の点にも注意が必要です。

計算値はあくまで基準であり、実際の加工では工具の状態、機械の剛性、クーラントの有無などによって最適値が変わります。特に初めての材質や形状を加工する際は、計算値よりも低めの回転数から始めて、徐々に上げていく方が安全です。

工具の異常な摩耗、ビビリ振動の発生、仕上げ面の粗さなどの問題が生じた場合は、回転数や送り速度の見直しが必要です。また、定期的に工具の状態を確認し、摩耗が進んでいる場合は切削条件を調整するか、工具を交換することが重要です。

参考・免責事項
本記事は2025年10月20日時点の情報に基づいて作成されています。切削条件は材質、工具、機械の状態によって大きく異なるため、記載の数値はあくまで一般的な目安です。実際の加工においては、安全を最優先し、使用する工具や機械のメーカー推奨値を参考にしてください。記事内容は個人的な考察に基づくものであり、専門的な判断については機械加工の専門家や工具メーカーにご相談ください。