等差数列の和の公式証明|ガウス少年の天才的発想から学ぶ効率的計算法

等差数列の和の公式証明|ガウス少年の天才的発想から学ぶ効率的計算法

更新日:2025年10月17日

「1から100までの数を全部足しなさい」という課題を、10歳の少年が数秒で解いた―これは数学史に残る有名なエピソードです。この少年こそ、後に「数学の王」と呼ばれるカール・フリードリヒ・ガウスでした。彼が用いた方法は、等差数列の和の公式の本質を美しく示しています。個人的な関心から、このガウスの発想と公式の証明について考察してみました。同じように数学の美しさに興味をお持ちの方に参考になれば幸いです。

ガウスのエピソードと等差数列の基本

10歳のガウスが見せた天才的発想

1787年、ドイツの小学校で一つの出来事が起こりました。教師が生徒たちに「1から100までの数をすべて足しなさい」という課題を出したのです。これは生徒たちを静かにさせるための時間稼ぎだったと言われています。

ところが、わずか10歳だったカール・フリードリヒ・ガウスは、他の生徒がまだ計算を始めたばかりの頃に答えを書き終えました。その答えは「5050」。完璧に正解でした。

ガウスは単純に1+2+3+...と順番に足していったのではありません。彼は「1と100」「2と99」「3と98」というように、両端から組み合わせると必ず101になることに気づいたのです。このような組は50組できるため、101×50=5050と瞬時に計算できたのです。

等差数列とは

ガウスが解いた問題は、数学的には「等差数列の和」と呼ばれます。等差数列とは、隣り合う項の差が一定の数列のことです。

等差数列の基本用語
初項(a₁):数列の最初の項
公差(d):隣り合う項の差
第n項(aₙ):数列のn番目の項
項数(n):数列の項の個数

例えば、1, 3, 5, 7, 9, ... は初項が1、公差が2の等差数列です。また、10, 7, 4, 1, -2, ... は初項が10、公差が-3の等差数列です。

第n項の公式

等差数列の第n項は次の公式で表せます:

\( a_n = a_1 + (n-1)d \)

例えば、初項が3、公差が5の等差数列の第10項は:

\( a_{10} = 3 + (10-1) \times 5 = 3 + 45 = 48 \)

和の公式の証明

証明方法1:ガウスの方法(視覚的理解)

ガウスが使った方法を一般化してみましょう。等差数列の和をSₙとします:

\( S_n = a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_{n-1} + a_n \)

ここで、同じ和を逆順に書いてみます:

\( S_n = a_n + a_{n-1} + a_{n-2} + \cdots + a_2 + a_1 \)

これら2つの式を縦に並べて足し合わせると:

\( S_n = a_1 + a_2 + a_3 + \cdots + a_{n-1} + a_n \)

\( + S_n = a_n + a_{n-1} + a_{n-2} + \cdots + a_2 + a_1 \)


\( 2S_n = (a_1+a_n) + (a_2+a_{n-1}) + (a_3+a_{n-2}) + \cdots + (a_{n-1}+a_2) + (a_n+a_1) \)

重要なポイント
等差数列では、両端から同じ距離にある項を足すと必ず同じ値になります。
つまり:\( a_1 + a_n = a_2 + a_{n-1} = a_3 + a_{n-2} = \cdots \)

この和は n 個あるので:

\( 2S_n = n(a_1 + a_n) \)

両辺を2で割ると、等差数列の和の公式が得られます:

\( S_n = \frac{n(a_1 + a_n)}{2} \)

証明方法2:代数的証明

もう一つの形の公式も導出できます。第n項は \( a_n = a_1 + (n-1)d \) なので、これを上の公式に代入すると:

\( S_n = \frac{n(a_1 + a_1 + (n-1)d)}{2} \)

\( S_n = \frac{n(2a_1 + (n-1)d)}{2} \)

これも等差数列の和の公式として頻繁に使われます:

\( S_n = \frac{n\{2a_1 + (n-1)d\}}{2} \)

公式の使い分け

2つの公式の使い分け

  • \( S_n = \frac{n(a_1 + a_n)}{2} \):第n項が分かっている場合に便利
  • \( S_n = \frac{n\{2a_1 + (n-1)d\}}{2} \):初項と公差が分かっている場合に便利

実用的な応用例と練習問題

応用例1:積立貯金の計算

毎月の貯金額を1000円ずつ増やしていく場合、1年間でいくら貯まるでしょうか?

解答:

1月:10,000円、2月:11,000円、3月:12,000円...と続きます。

これは初項 a₁ = 10,000、公差 d = 1,000、項数 n = 12 の等差数列です。

\( S_{12} = \frac{12 \times \{2 \times 10000 + (12-1) \times 1000\}}{2} \)

\( = \frac{12 \times (20000 + 11000)}{2} = \frac{12 \times 31000}{2} = 186,000 \)

答え:186,000円

応用例2:座席配置の問題

映画館で、1列目が20席、2列目が22席、3列目が24席...と2席ずつ増えていきます。15列目まである場合、全部で何席あるでしょうか?

解答:

初項 a₁ = 20、公差 d = 2、項数 n = 15

まず15列目の座席数を求めます:

\( a_{15} = 20 + (15-1) \times 2 = 20 + 28 = 48 \)

次に総座席数を求めます:

\( S_{15} = \frac{15 \times (20 + 48)}{2} = \frac{15 \times 68}{2} = 510 \)

答え:510席

練習問題

問題1

3, 7, 11, 15, ... という等差数列の初項から第20項までの和を求めなさい。

▼ 解答を見る

初項 a₁ = 3、公差 d = 4、項数 n = 20

第20項:\( a_{20} = 3 + (20-1) \times 4 = 3 + 76 = 79 \)

和:\( S_{20} = \frac{20 \times (3 + 79)}{2} = \frac{20 \times 82}{2} = 820 \)

答え:820

問題2

100から1まで逆順に並んだ数(100, 99, 98, ..., 2, 1)の和を求めなさい。

▼ 解答を見る

初項 a₁ = 100、末項 a₁₀₀ = 1、項数 n = 100

和:\( S_{100} = \frac{100 \times (100 + 1)}{2} = \frac{100 \times 101}{2} = 5050 \)

答え:5050(ガウスの問題と同じ答えです!)

問題3

ある階段の1段目の高さが15cm、最上段が150cmです。1段ごとに5cmずつ高くなっている場合、この階段は何段ありますか?また、全段の高さの合計は何cmですか?

▼ 解答を見る

段数を求める:

\( a_n = a_1 + (n-1)d \) より

\( 150 = 15 + (n-1) \times 5 \)

\( 135 = (n-1) \times 5 \)

\( n-1 = 27 \)

\( n = 28 \)

段数:28段

高さの合計:

\( S_{28} = \frac{28 \times (15 + 150)}{2} = \frac{28 \times 165}{2} = 2310 \)

答え:2310cm(23.1m)

日常生活での活用

等差数列の和の公式は、以下のような場面で役立ちます:

  • 貯金計画:毎月の貯金額を少しずつ増やす場合の総額計算
  • 工事の見積もり:階段やスロープなど、規則的に変化する構造物の材料計算
  • スケジュール管理:徐々に作業時間を増やす場合の総作業時間の計算
  • データ分析:等間隔で測定したデータの合計値の推定
ガウスの発想の本質は、「問題を別の角度から見る」ことでした。1から順番に足すという直線的な思考ではなく、全体を俯瞰して対称性を見出すという視点の転換が、効率的な解法につながったのです。これは数学だけでなく、日常の問題解決においても重要な考え方と言えるでしょう。
参考・免責事項
本記事は2025年10月17日時点の情報に基づいて作成されています。記事内容は個人的な考察に基づくものであり、数学の理解を深めることを目的としています。学習や指導の参考としてご活用ください。