水文学的プロセス

流域水文学の基本概念

淀川流域（流域面積8,240 km²）の水文学的プロセスは、降水・蒸発散・流出・地下水流動の相互作用により決定される。年降水量1,400-1,600mmの温帯湿潤気候下で、6-7月の梅雨期と9-10月の台風期に集中する降水パターンが、河川生態系の基本的な水文レジームを形成している。

水文コンポーネント

• 表面流出: 降雨強度>浸透能時の即時流出
• 中間流出: 土壌層内の側方流動
• 基底流出: 地下水からの持続的流出
• 蒸発散: 植物による水収支制御

洪水生態学

1. 洪水パルス理論

2. 洪水頻度と植生応答

3. 洪水適応戦略

水位変動と植生帯

1. 河川横断植生帯の形成

淀川河川敷では、標高・冠水頻度・土壌水分に応じた明瞭な植生帯（vegetation zone）が形成される：

2. 水位変動の季節パターン

3. 植生帯移行の動態

気候変動・河川改修により植生帯境界は動的に変化する。特に中間帯（湿潤草地）での種競争が激化し、外来種侵入のホットスポットとなっている。

地下水と植物分布

1. 地下水位と根系分布

2. 土壌水分と植物生理

3. 毛細管フリンジの生態学的意義

地下水面上の毛細管フリンジ（20-80cm）は、植物の水利用可能域として重要。この領域の土壌物理性（粒径分布・間隙率）が植物群集の種組成を決定する。

季節的水文変動

1. 春季水文（3-5月）

• 雪解け流出: 上流域からの安定供給
• 春雨影響: 前線性降雨による緩やかな増水
• 植物応答: 萌芽期の十分な水供給
• 土壌条件: 適湿状態での根系発達

2. 夏季水文（6-8月）

• 梅雨期: 集中豪雨による急激な水位上昇
• 渇水期: 高温・高蒸発散による水ストレス
• 植物応答: 浸透圧調節・蒸散制御
• 競争関係: 水利用効率による優劣決定

3. 秋季水文（9-11月）

• 台風影響: 極端降雨による大規模攪乱
• 減水期: 緩やかな水位低下
• 植物応答: 種子散布・越冬準備
• 土壌変化: 堆積物による生育地更新

4. 冬季水文（12-2月）

• 低流量期: 基底流出が主体
• 氷結影響: 土壌凍結による根系ストレス
• 植物応答: 休眠・低代謝
• 生息地変化: 露出域拡大による微環境多様化

人為的水文改変の影響

1. ダム・堰による影響

2. 河道改修の影響

3. 都市化による影響

• 表面流出増加: 不浸透面拡大による急激な流出
• 地下水位低下: 地下水採取・舗装による涵養阻害
• 水質悪化: 都市排水による富栄養化
• 熱島効果: 都市部での蒸発散促進