採餌行動

鳩がどのように餌を探し、何を食べているのかを科学的に解明します。

鳩(ドバト)は雑食性の鳥類であり、都市環境から農村地域まで幅広い環境で生活しています。 その採餌行動は環境への高い適応力を示しており、人間社会との共生を可能にしている重要な要素です。

食性と食物選好

鳩は基本的に種子食性の鳥ですが、都市環境では人間の食べ物の残りも摂取します。 主な食物源として以下のようなものがあります。

鳩の主要な食物

  • 自然食: 草の種子、穀物、豆類、木の実
  • 都市での食物: パンくず、米粒、スナック菓子の破片
  • 栄養補給: 小石(消化を助ける)、塩分を含む土

栄養要求

鳩の1日あたりの食物摂取量は体重の約10-15%(30-45g)です。 水分も重要で、1日に約30-60mlの水を必要とします。 特に繁殖期には、タンパク質とカルシウムの要求量が増加します。

採餌パターン

鳩の採餌活動は主に日中に行われ、特に朝と夕方に活発になります。 このパターンは「双峰性活動パターン」と呼ばれています。

1

早朝(日の出~午前9時)

最も活発な採餌時間。夜間の絶食後にエネルギー補給を行います。

2

日中(午前9時~午後3時)

採餌活動は低下。休息や羽繕いに時間を費やします。

3

夕方(午後3時~日没)

再び採餌活動が活発に。夜間に備えてエネルギーを蓄えます。

都市環境での適応

都市に生息する鳩は、人間の生活パターンに合わせて採餌行動を調整しています。

採餌場所の選択

  • 公園: 人々が餌を与える主要な場所
  • 駅前広場: 食べ物を落とす人が多い
  • 商店街: 飲食店からの食物残渣
  • 学校の校庭: 給食やお弁当の残り

餌やりの問題

過度な餌やりは鳩の個体数増加を招き、糞害などの都市問題を引き起こす可能性があります。 適切な距離を保ちながら観察することが推奨されます。

集団採餌行動

鳩はしばしば群れで採餌を行います。これには以下のような利点があります。

情報共有

他個体の採餌成功を観察し、良い餌場を学習します。

捕食者警戒

多くの目で周囲を監視し、危険を早期に発見できます。

競争と協力

餌を巡る競争がありながらも、群れ全体の利益を優先する行動も見られます。

優位順位と採餌

群れの中には優位順位が存在し、優位個体は良い餌場へのアクセスを優先的に得ることができます。 この順位は主に体サイズ、年齢、性別によって決まります。

季節変化と採餌

季節によって食物の入手可能性が変化するため、鳩の採餌行動も適応的に変化します。

季節 主要な食物源 採餌行動の特徴
新芽、若い種子、昆虫 繁殖期のため高タンパク食を選好
熟した種子、果実 早朝と夕方に集中して採餌
落ち種、木の実 冬に備えて採餌時間が増加
貯蔵種子、人間の給餌 エネルギー節約のため効率的な採餌

まとめ

鳩の採餌行動は、環境への高い適応力を示す興味深い研究対象です。 都市環境では人間の生活リズムに合わせた採餌パターンを発達させ、 季節や社会的要因に応じて柔軟に行動を変化させています。

今後の研究では、都市化の進行が鳩の採餌行動にどのような影響を与えるか、 また人間との共生をより良いものにするための管理方法について、 さらなる調査が必要とされています。

関連トピック

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参考文献

  1. Johnston, R.F. & Janiga, M. (1995). Feral Pigeons. Oxford University Press.
  2. Goodwin, D. (1983). Pigeons and Doves of the World (3rd ed.). Cornell University Press.