鳩は年間を通じて繁殖可能な鳥類で、都市環境では特に繁殖頻度が高くなっています。 両親が協力して子育てを行い、「ピジョンミルク」という特殊な分泌物で雛を育てるという、 鳥類の中でも独特な繁殖生態を持っています。
繁殖サイクル
鳩の繁殖は環境条件が良好であれば年中可能ですが、特に春から秋にかけて活発になります。
求愛・つがい形成
オスの求愛ディスプレイとメスの受け入れ、つがいの絆形成
巣作り
両親が協力して小枝や草を集め、巣を構築
産卵
通常2個の卵を1-2日間隔で産卵
抱卵
約17-19日間、雌雄交代で抱卵
育雛
孵化後約30日間、親鳥が雛に給餌
巣作り行動
鳩の巣は比較的簡素な構造ですが、場所選びには慎重です。
巣の特徴
- 材料: 小枝、草、ワラ、時には針金やひも
- サイズ: 直径20-30cm程度
- 構造: 浅い皿状で、卵が転がらない程度の深さ
- 場所: 建物の隙間、橋の下、換気口など雨風を避けられる場所
巣作りの分担
オスの役割
主に巣材を集めて運ぶ。メスに材料を渡す。
メスの役割
巣の構築と形成。材料の配置と調整。
共同作業
巣の場所選定は両親で相談。防衛も協力して行う。
産卵と抱卵
鳩は通常1回の繁殖で2個の卵を産みます。これは鳥類の中では少ない部類に入ります。
項目 | 詳細 |
---|---|
卵の数 | 通常2個(まれに1個または3個) |
卵の色 | 白色、光沢がある |
卵のサイズ | 長径約38-40mm、短径約28-30mm |
産卵間隔 | 1個目と2個目の間は約44時間 |
抱卵期間 | 17-19日(平均18日) |
抱卵の交代制
鳩の抱卵は雌雄が規則的に交代して行います:
- 日中(朝~夕方): 主にオスが抱卵
- 夜間(夕方~朝): 主にメスが抱卵
ピジョンミルク
鳩の最も特徴的な子育て行動の一つが「ピジョンミルク」の分泌です。
ピジョンミルクとは
鳩の素嚢(そのう)から分泌される栄養豊富な物質で、哺乳類の乳に似た機能を持ちます。 鳥類では鳩、フラミンゴ、皇帝ペンギンのみがこの能力を持っています。
ピジョンミルクの特徴
成分
タンパク質60%、脂肪30%、炭水化物・ミネラル10%という高栄養価
分泌期間
孵化の2-3日前から分泌開始、約2週間継続
給餌方法
雛が親鳥の口の中に頭を入れて直接摂取
親鳥の世話
鳩の親鳥は雛が巣立つまで献身的に世話をします。
成長段階と給餌内容
- 0-7日齢: ピジョンミルクのみ
- 8-14日齢: ピジョンミルクと半消化された種子の混合
- 15-25日齢: 徐々に固形の種子の割合を増加
- 26-35日齢: ほぼ成鳥と同じ餌、自立の準備
雛の発達
- 孵化時: 目は閉じており、わずかな黄色い産毛のみ
- 7日目: 目が開き始める
- 14日目: 羽管が発達し、羽毛が生え始める
- 21日目: ほぼ全身が羽毛で覆われる
- 30-35日目: 巣立ち、短距離の飛行が可能に
巣立ち後のケア
巣立ち後も1-2週間は親鳥が給餌を続け、徐々に独立させていきます。 この期間に雛は採餌方法や危険回避を学習します。
まとめ
鳩の繁殖と子育ては、両親の協力体制とピジョンミルクという独特な栄養供給システムが特徴的です。 都市環境では年間5-6回の繁殖が可能で、これが個体数の急速な増加につながることもあります。
効率的な繁殖システムと高い育雛成功率により、鳩は様々な環境で繁栄することができています。 今後の研究では、都市化が繁殖行動に与える影響や、個体数管理の方法についてさらなる調査が必要です。