Googleは2024年の広告安全性レポート(Ads Safety Report)を公開し、AI技術を活用した不正広告対策の最新成果を発表しました。このレポートでは、2023年にはAIが広告コンテンツの審査と違反者への対応を加速させたことを報告していましたが、2024年の重要なポイントは「AIが不正広告への対応だけでなく、詐欺師がエコシステムに参入すること自体を防ぐ能力を強化している」ことだとしています。
より高度なモデルによる広告安全性の強化
Googleは2024年に大規模言語モデル(LLM)の強化に大きく投資し、合計50以上の機能強化を実施しました。これにより、不正広告の検出と対応がより効率的かつ正確になりました。新しいLLMモデルは、以前のモデルに比べてはるかに少ない情報でも、新たな脅威の認識、不正パターンの特定、正規ビジネスと詐欺の区別ができるようになっています。
LLMによる広告安全性プロセス
特にパブリッシャーポリシーの執行では、AI駆動モデルが昨年対応したページの97%の検出に貢献し、サイトレビューの大幅な高速化を実現しました。これにより、正規パブリッシャーは収益化を迅速に開始できるようになる一方で、違反ページへの広告表示を阻止することに成功しています。
数十億の悪質な広告表示を未然に防止
LLMは単なるポリシー執行を超え、より積極的な不正防止能力を強化しています。これらのAIツールは複雑な調査を加速し、悪質なアクター・ネットワークやリピート違反者を特定する能力を向上させました。これらの予防的取り組みにより、数十億件のポリシー違反広告がユーザーに表示されることを防止すると同時に、正規ビジネスがすぐに潜在顧客に広告を表示できる環境も維持しています。
2024年、Googleはアカウント設定プロセスの早い段階でこの種の不正を阻止するための投資を継続し、広告が表示される前に多数の有害コンテンツをブロックすることに成功しました。この成果は、合計3,920万以上のアカウントを停止し、そのほとんどが広告を1つも表示する前に停止されたという形で表れています。
Googleの広告安全性対策の数値
進化する詐欺への対応
Googleは2024年も変化し続ける洗練された詐欺師の対策を強化しました。特に注目すべき業界全体のトレンドとして、AI生成画像や音声を使用して有名人との関連を偽装し詐欺を促進する「有名人なりすまし広告」の増加が挙げられています。
この問題に対抗するため、Googleは専門家100人以上からなる専用チームを立ち上げ、これらの詐欺を分析し効果的な対策を開発しました。その一つが「不正表示ポリシー」の更新で、こうした詐欺を促進する広告主を停止できるようになりました。この結果、70万件以上の違反広告主アカウントを永久停止することに成功し、この種の詐欺広告の報告が前年比90%減少するという大きな成果を上げています。
これは、世界中のあらゆる種類の広告ベースの詐欺と戦うGoogleの継続的な取り組みの一例に過ぎません。2024年には、詐欺に最も密接に関連する広告ポリシー違反で4億1,500万の広告をブロックまたは削除し、500万以上のアカウントを停止しました。
選挙の公正性を世界的に保護
2024年は世界の選挙において重要な年であり、世界人口の半分が選挙実施国に住んでいました。このような背景のもと、Googleの選挙公正性をサポートする取り組みはかつてないほど重要になっています。
この一環として、選挙広告主の身元確認と透明性要件を新たな国々に拡大しました。「広告主」の開示や全選挙広告の公開透明性レポートなどの施策は、世界中のユーザーが選挙広告を識別し、誰が広告費を支払ったかを知ることを可能にしています。さらに、Googleは選挙広告におけるAI生成コンテンツの開示要件を最初に導入した企業となり、選挙に関する既存の透明性への取り組みをさらに強化しました。
過去1年間だけでも、8,900以上の新規選挙広告主を確認し、未確認アカウントからの1,070万の選挙広告を削除しました。また、世界中で明らかに虚偽の選挙主張に対するポリシーの執行も継続しています。
ポリシー違反への対応強化
Googleのポリシーは、ユーザーと広告エコシステム全体に安全でポジティブな体験を提供することを目的に設計されており、有害と考えられるコンテンツを禁止しています。2024年に実施された主な広告主ポリシーの執行対象には以下が含まれます:
- 広告ネットワークの悪用:7億9,310万件
- 商標関連:5億310万件
- パーソナライズド広告:4億9,130万件
- 法的要件:2億8,030万件
- 金融サービス:1億9,370万件
- 不正表示:1億4,690万件
また、合計91億件の制限付き広告も管理されました。これらは法的または文化的に機微な内容を含むものの、一定の条件下で許可される広告です。
パブリッシャーポリシーの執行
オープンウェブをサポートするため、パブリッシャーがコンテンツから収益を得られるよう支援していますが、このコンテンツは特定のパブリッシャーポリシーや制限の対象となります。2024年には13億ページに対して対応を行い、主な違反カテゴリには以下が含まれます:
- 性的コンテンツ:12億ページ
- 危険または中傷的コンテンツ:2,480万ページ
- 悪意のあるまたは不要なソフトウェア:1,930万ページ
- ショッキングなコンテンツ:1,360万ページ
- 武器の宣伝と販売:1,280万ページ
2024年の対応数値:AIの影響を示す証拠
2024年、Googleは合計で:
- 51億以上の広告を削除
- 91億以上の広告を制限
- 3,920万以上の広告主アカウントを停止
- 13億のパブリッシャーページに対して広告制限措置を実施
- 22万以上のパブリッシャーサイトに対してサイトレベルの対応を実施
- 過去1年間で30以上の広告およびパブリッシャーポリシーを更新
Googleは最新レポートで「広告安全性の環境は常に変化し続けており、AI技術の進歩、新たな不正手法、世界的イベントなどによって再形成され、業界に継続的な機敏性を要求している」と指摘しています。この動的な環境において、最先端技術の展開とパートナーとの協力により、すべての人々により安全なオンライン体験を促進していくとしています。