Anthropicは、AIが職業やタスクに与える影響を継続的に測定する「Anthropic Economic Index」の最新レポートを公開しました。今回はClaude 3.7 Sonnetの導入後に観察された傾向に焦点を当てています。
主な調査結果
最新の調査結果では、以下のような傾向が明らかになりました:
- Claude 3.7 Sonnet導入後、コーディング分野の利用率が約3%増加
- 教育・科学・医療などの専門領域での利用も増加傾向
- 新機能「拡張思考モード」は主に技術的タスクで活用されている
- タスクごとの補助的利用(Augmentation)と自動化(Automation)の割合データを公開
全体フロー:職業別タスクへのAIマッピング
Claude 3.7 Sonnet導入後の変化
Anthropicは、Claude 3.7 Sonnet導入後の11日間に収集された100万件の匿名化された会話データを分析しました。前回の調査と比較して、以下の変化が見られました:
- コンピュータ・数学関連職種のタスク利用が3%増加
- 教育・科学分野での利用シェアが拡大
- コーディング能力の向上を反映した利用パターンの変化
拡張思考モードの活用状況
Claude 3.7 Sonnetの新機能「拡張思考モード」は、複雑な質問に対してより長時間の思考を可能にします。この機能の利用状況分析では:
- コンピュータ・情報研究科学者関連タスクで最も高い利用率(約10%)
- ソフトウェア開発者関連タスクが次点(約8%)
- マルチメディアアーティスト(約7%)やビデオゲームデザイナー(約6%)など創造的職種でも活用
タスク分類とインタラクション分析
AIとのインタラクションを「補助的支援(Augmentation)」と「完全自動化(Automation)」に分類した分析では:
- 全体の57%が補助的支援、43%が自動化(前回調査とほぼ同じ比率)
- 学習目的のインタラクションが約23%から約28%に増加
- 職業カテゴリ別では、コミュニティ・社会サービス関連タスクで補助的支援が約75%と最も高い
- 生産やコンピュータ・数学関連職種では補助/自動化の比率が約50:50
職業別の特徴的なインタラクションパターン
より詳細な職業別分析では、以下のような特徴が見られました:
- コピーライターやエディター関連タスクでは「タスク反復」(人間とAIが共同で文章作成)の割合が最も高い(約58%)
- 翻訳者・通訳者関連タスクでは「指示型」インタラクション(最小限の人間関与でAIがタスクを完了)の割合が高い
- 司書関連タスクでは「学習」インタラクション(情報や説明を求める利用)が約56%と最も高い
新しいボトムアップ・タクソノミー
従来の職業ベース分類に加え、Anthropicは630の行動クラスタを含む新しいボトムアップ分類法を導入しました。この分類法では、O*NETデータベースに含まれていない新しいタスクも捉えることができます。特徴的なクラスタ例:
- 水管理システムとインフラプロジェクトの支援
- インタラクティブな可視化機能を持つ物理ベースのシミュレーション作成
- フォント選択、実装、トラブルシューティングの支援
- 求職書類の作成・改善支援
- バッテリー技術と充電システムに関するガイダンス
- コードとデータベースでのタイムゾーン処理の支援
今後の展望と研究者募集
Anthropicは今後もこの指標を継続的に更新し、モデル能力の向上と経済全体への応用が進むにつれて新しい指標を開発していく予定です。同社は労働市場へのAIの影響を研究する社会的影響研究者、研究エンジニア、経済学者を募集しています。
出典: Anthropic - Economic Index Update(2025年3月28日)
関連リポジトリ: GitHub - OpenAI